青木節子 総合政策学部教授(法学博士)インタビュー

宇宙というフロンティアで、
国際法と秩序の意義を問い直していきたい。

何をもって法とするか?宇宙ではそれが問題となる

 「宇宙法」と聞いてピンと来る人はまだ少ないだろう。しかし地球上の他の活動と同様、宇宙開発・利用も法に則って行われている。青木節子教授は、この新たな分野の第一人者だ。

 「宇宙法は国際経済法や国際人権法と並ぶ国際法の一分野に位置づけられています。世界初の衛星打ち上げが 1957 年ですから、法としては非常に新しいものですが、宇宙での秩序構築は、成功すれば地上より平和で調和のとれた世界を実現できると期待されています」

 そもそも国際法は、法典が存在し、法の内容を調べやすい国内法とは異なり、散発的に条約や慣習法が存在するに過ぎない。その上、宇宙法は新しい分野であるため、条約もなければ確立した慣習法もないことが多く、宇宙活動を規律する法を発見することが重要な作業となる。

 「例えば、宇宙条約では、国家が宇宙を領有することを禁止していますが、その規定を逆手にとり、個人ならば天体を所有できると解釈し、月や火星の土地を売る企業があります。果たして、それは宇宙条約の正しい解釈なのか、国家と個人の関係や占有と所有の関係などに基づいて答えを探します」

青木節子、宇宙を語る。

 大学で国際私法を専攻していた青木教授が宇宙法を自らの研究対象と定めたのは、カナダへの留学が契機。マッギル大学の「航空・宇宙法研究所」に所属し、宇宙における軍備管理をテーマに博士論文をまとめた。

 「宇宙には様々な問題があります。例えば、地上で戦闘が始まったら自衛権の行使として宇宙にある敵国の衛星を攻撃しても良いのか、ということ。また、衛星打ち上げの際の保険、静止軌道の分配、宇宙ゴミ、衛星落下の際の損害賠償の問題、宇宙基地で生じ得る人間同士のトラブル、天然資源の商業利用についての制度など。これから規則を作らなくてはならない問題もあり、実に興味深い分野だと思います」

国際法・宇宙法を通じて社会のルールを模索したい

 法学者として先端的な研究を展開すると同時に、青木教授が今、力を入れているのは、学生たちのプレゼンテーション能力を引き出すこと。特に2005年に開催される「国際宇宙航空連盟大会」に向けては、学生たちによる国際模擬裁判のアジア代表を目指している。

 「宇宙を舞台に、武力紛争法、地球環境法などに関わる様々な問題の解決を想定するところから、申述書の作成を経て弁論に至る過程で、学生達が目に見えて積極的になっていくのがわかります。国際裁判というからにはすべて英語ですから、法的な思考と同時に語学能力も磨かれますし、団結力も強まる。特に総合政策学部、環境情報学部はリーダーシップをとることを恐れない女子学生が多く、私自身も大いに啓発されます」

 これからも慶應という開かれた環境の特性を活かし、学生たちが切嵯琢磨しつつ互いの能力を伸ばし合う手助けをしていきたいと語る。

 「湘南藤沢キャンパス (SFC) は、伝統的な専門を基礎から学ぶのではなく、“問題発見、問題解決”を通じて専門性を高めることを目指しています。ですから、学生には問題発見や解決の道具・技術・思考方法を伝えていきたい。宇宙開発や地球環境など、もはや一国内、限られた国同士の取り決めでは解決できない問題が増えてきた現在、グローバルスタンダードとは、“いったい何がルールなのか”を探すことと同義だと思います。慶應ならではの環境の中で、国際法、宇宙法を通じ、その“見立て”の部分を学生たちと展開していきたいですね。私自身も今ルールを模索しているところなのですから」

(「慶應義塾大学ガイドブック2006」より転載)